就任から4年という驚異的なスピードで、県大会すら勝ち抜けない低迷期の母校、興南を春夏連覇へ導いたのが、名将、我喜屋優監督である。
当時のチームは、かつて春夏連覇へ導いた実績を持つ横浜高校の渡辺元智監督など、数々の実績を持つ指導者が大会前から認めるほどの、圧倒的な強さであった。
そんな偉業達成に多くのメディアは、我喜屋監督の野球指導の秘訣を探ろうと、連日取材を重ねていたが、驚くことにほとんど野球の指導を行っていなかったのだ。
挨拶や服装などの生活態度や人間性などを中心に、グランド以上の面を細かく指導し、人として成長させることに力を入れている。
自身の野球キャリアから、「強いチームの野球は大人な野球である」という結論を見つけ、まず選手ではなく生徒として接し、その上で、精神面や考え方を大人に近づけるような指導を行なっているのだ。
高校生は本来、感情がプレーを左右することがほとんどで、その感情をいかに低下させず高めるかなどが、指導者の腕の見せ所であった。
しかし、我喜屋監督は、感情をコントロールすることを選手たちに教え、根拠のある行動や発言をさせるように指導している。
事実、興南の選手たちは、試合中の良いプレーに対してもガッツポーズをせず、次の場面に備えて準備をするなど、隙を作るどころか、相手の隙を探しているなど、余裕すら感じられる。
春夏連覇を成し遂げたチームも、優勝の瞬間は表情を崩したものの、すぐに周囲への感謝の挨拶をしたり、相手チームを気遣うなど、良い意味で高校生らしくないチームであった。
高校野球を成績重視で指導するのではなく、人生の通過点として成長を重視し指導する我喜屋監督は、2度目の偉業を目指しながらも、人間作りに力を入れている。