「結果」以上に、「選手」を大切にする指導スタイルで、低迷しつつあった名門、静岡高校を復活させたのは、栗林俊輔監督である。
栗林監督が就任した際の静岡高校は、地区の私学勢の躍進もあり、力のある選手が在籍していながら、甲子園の切符が遠い状態が続いており、OBやファンからは再建を託されていた。
期待に応えようと、結果を出すことに集中し、技術練習を徹底して行ったが、就任2年目には、120年のチームの歴史で初となる、初戦コールド負けを喫するなど、重苦しいスタートとなった。
そこで、自身の指導を見直すと、選手たちの個性を見極められていなかったり、能力を引き出せていなど、選手の力を活かしきれていないことが、大敗の原因だとに気づいたのであった。
そのため、技術やスキルといった就任当時から続けていた指導を改め、まずは、一人一人の個性や能力といったものを活かす野球を目指し、選手を大切にすることを始めた。
最初に導入したのは、その日行った練習メニューや、気づいた課題、体調の善し悪しなどを記入し、毎日提出をルールとした、野球ノートであった。
この、野球ノートを取り入れたことで、選手全員の心の声や悩みなどを見逃すことが少なくなり、試合や練習時の言葉がけもスムーズに行うことができるようになり、監督と選手の信頼関係も築けるようになった。
そして、長年甲子園から遠ざかっていたチームの士気を高めるために、敢えて「甲子園優勝」という高い目標も設定し、練習のモチベーション維持にも努めた。
目指すべきゴールと、サポートしてくれる監督がいるという安心感が選手たちに伝わると、チームは自然と勝ち始めるようになり、結果も残せるようになっていった。
そんな新たな指導方を静岡高校の伝統に刻みながら、チームの歴史上二度目となる全国制覇を目指す、栗林監督の挑戦に、今後も目が離せない。