2019年の夏の選手権の3回戦で、甲子園のタイブレーク史上、1、2を争う激闘を演じ、延長14回で惜しくも敗れた、智弁和歌山。
そんな智弁和歌山の主将を務めていたのが、5季連続出場の甲子園で、「ノーエラー」という驚異的な守備力の高さでチームを支えていた、黒川史陽選手である。
黒川選手の無失策の記録は、日々の練習だけでなく、毎試合毎イニング守備につく際に行う、「イレギュラーしないように」と願いを込めながら、土を「手」でならしていた小さな努力の成果でもあった。
智弁和歌山では、イレギュラーを「不運」として考えるのではなく、「防げるミス」と考え、日本一のグランドと称される甲子園でも「手」でならす作業を怠らなかった。
小さな努力を続ける智弁ナインに「野球の神様」は微笑み、2回戦では、黒川選手の打席でイレギュラーが味方し、併殺コースの打球が、外野へ抜ける同点打となった。
この取り組みは大きな話題となり、3回戦で対戦した星稜も、智弁和歌山に影響を受け、試合途中から毎イニング土を「手」でならすようになっていった。
相手チームも真似したくなるような、素晴らしい伝統を残し甲子園を去った智弁和歌山の選手たちを、「野球の神様」は見放すことはないだろう。