「野球のエリート必ずしも人生のエリートでなし、野球の控えは人生の控えではない」/ 池田 蔦文也監督

人々は栄光や功績などに憧れを抱くが、人生では光の当たる場所に居ることだけが、素晴らしいとは限らない。

光を浴びる人を支えたり、薄暗い場所でも懸命に励むことも、恥ずべきことではなく立派なものである。

光を浴びていることに満足し、努力や感謝を怠っている状態の方が問題であり不名誉なことである。

そんな考えを持ち、野球の勝者ではなく人生の勝者を育てることに力を入れていたのは、池田高校を指揮していた蔦文也監督である。

蔦監督は、「やまびこ打線」と称される強打を武器に甲子園を3度も制するなど、球史にその名を刻んでいる。

金属バットの特性を活かすために、当時の高校野球界どは異例の筋力トレーニングを積極的に取り入れ、好成績を残したことから野球指導に定評がある。

しかし、試合で勝つことより、頑張ることの大切さや最後まで努力することの重要性を学ばせることを優先していた。

そこには、野球で失敗したり控え選手になっていても、その悔しさや経験を次のステージで活かし、人生の勝者へと導くことが、自らの仕事であるという考えがあったからだ。

技術を伸ばすことや甲子園で勝つことにばかりとらわれず、選手たちの人生を見据えての教育を大切にしていた蔦監督のスタイルこそ、高校野球の指導者のあるべき姿なのだろう。

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