2009年の夏の甲子園、翌年のセンバツと、2季連続で8強進出を果たした、東の横綱帝京高校。
当時、チームの主力投手として活躍していたのは、甲子園の1年生最速記録更新となる、148キロを記録した、伊藤拓郎選手である。
伊藤選手は、中学時代に日本代表に選出された経歴を持っていたこともあり、帝京高校入学後すぐの、春の大会から試合に出場するなど、将来を期待されると投手であった。
1年夏には背番号18で、甲子園デビューを果たすと、初戦で147キロ、3回戦では1年生史上最速の148キロを記録し、華々しいデビューとなった。
しかし、注目や期待されたことがプレッシャーとなり、スピードばかりを求めていくうちに、本来の投球やフォームを見失い、夏は予選の5回戦で敗れた。
続く新チームでは、主将という新たな肩書きを背負うも、秋の大会では初戦敗退を喫するなど、思うような結果が残せない期間が続いていた。
そんな伊藤選手は、ほかのポジションを守り、客観的に投手を見たことで、投手としての姿勢や仲間の支えがあることなど、初心を思い出し、球速より質や内容を求めるようになった。
迎えた、最後の夏は、個人の記録や活躍を捨て、チームを甲子園へ導くための投球を続けたことで、東東京大会を制すると、甲子園でも1勝を挙げたのであった。