2012年の夏の甲子園で、4試合68奪三振の2年生エース、松井裕樹投手を軸に、ベスト8まで勝ち進んだ神奈川県の桐光学園。
当時、捕手として、松井投手をリードし、チームの勝利に大きく貢献していたのが、宇川一光選手である。
宇川選手は、松井選手の女房役として、投球だけでなく、精神的な支えも行うなど、あらゆる場面での「好リード」が数々の記録や勝利に影響を与えていた。
2年時の秋には、松井選手の伝家の宝刀、「スライダー」のキレに対応できず、後逸を繰り返し、捕手のレギュラーをはずされることもあった。
その悔しさから、テニスボールを使った至近距離からのノックを行い、後ろに逸らさない捕球体制や、ボールを見る目を慣らすなど、努力を続けていった。
迎えた、最後の夏の県大会準々決勝では、1点リードの9回一死三塁の後逸すれば同点という場面でも、スライダーを要求する強気のリードで相手を翻弄し、ピンチを切り抜けた。
勢いそのままに、甲子園出場を果たすと、記録には残らないものの、随所で配球や捕球のファインプレーでチームを救っていった。
捕球した際に、身体につくったいくつもの痣は、宇川選手の成長の証であり、チームとエースを支えた勲章でもあった。