1980年の夏の甲子園で、チーム史上初となる、全国制覇を成し遂げた、神奈川県の横浜高校。
当時、チームのエースを務めていたのは、1年時から主力投手として甲子園を経験していた、愛甲猛選手である。
愛甲選手は、横浜高校に特待生として進学したこともあり、入学後すぐから、上級生に混じり練習に参加していた。
しかし、当時の部内では、厳しい上下関係や、理不尽なルールが多く、特別扱いを受けていた愛甲選手に、周囲や先輩からいじめられることも少なくなかった。
それでも、黙々と練習に打ち込んだことで、1年夏には公式戦初登板となった県大会で、ノーヒットノーランを記録し、甲子園出場へと貢献したのであった。
だが、入部後からの猛練習の代償として、身体中に怪我を発症したことで、野球を離れ、次第に道を踏み外して行き、不良仲間と遊んで補導されるまでに至った。
渡辺元智監督の説得と、仲間の支えもあり、チームに復帰すると、それまでのワンマンプレーも改め、チームが勝つためのプレーを心がけるようになっていった。
迎えた最後の夏の決勝戦でも、勝利のために私利私欲を捨て、自ら降板を志願して、マウンドを譲るなど、プレーだけでなく、判断力でも全国制覇に貢献したのであった。