甲子園出場時に、技術でのミスに対して一切怒らず、選手たちにのびのびプレーをさせる指導をしていたことで、全国から賞賛の声を浴びたのは、上田西を指揮していた、原公彦監督である。
そんな原監督は、軟式高校野球の指導者として、6年間で2度も全国大会へ導いた実績もあったことから、就任当初は、技術面での指導が注目を集めていた。
そんな周囲の評判通り、硬式野球にはあまり取り入れられていなかった、作戦やサインプレーを中心に鍛え上げ、就任から僅か半年程で甲子園出場を決めるなど、直ぐに結果を出した。
しかし、甲子園や勝利を求めるあまり、選手たちを必要以上に厳しく指導し、能力を引き出せずに、指示待ちで消極的なプレーをする選手が多く、初の甲子園では、初戦敗退となった。
そうした悔しい経験から原監督は、怒ったり怒鳴りながらのチーム作りをやめ、選手たちが自ら楽しみながら、進んで取り組める野球環境を整えることに力を入れ始めた。
もちろん、野球の技術以外の人間性の部分や部のルールを守れない部員にはきちんと指導をするが、技術での指導は怒ることは一切しない。
技術指導の際は、楽しくプレーを継続できる言葉がけを意識して行い、失敗した選手にも、ダメな点を指摘するのではなく、改善点を伝えたり、成長していた点を評価するなどし、サポート役に徹している。
また、チーム作りでは、毎年部員が入れ替わるため、決まった野球のスタイルをあえて作らず、学年ごとのカラーや選手たちの個性を考慮して、方向性を決めていく。
そのため、足りない能力に対して適切な練習メニューを考えては取り入れ、時には、グラウンドを離れ、メンタルトレーニングに時間を割くこともある。
選手たちの能力を最大限に引き出せる「のびのび野球」という、原監督の残した新たな伝統を受け継ぎ、練習を続ける上田西が、更なる躍進を遂げる日は近そうだ。