野球のエリートコースを歩み、引退後は苦労の道を進むといった、栄光や挫折などの様々な経験から、人間性を重視して指導するのは、東海大菅生を指揮する若林弘泰監督である。
若林監督は、学生から社会人野球までを名門で過ごす、アマチュア野球界の王道を経験し、プロ入も果たしたが、故障に泣き、僅か6年で引退することとなった。
現実逃避の間もなく、家族を養うための費用を稼ぐために、球団関係者や先輩にサポートしてもらった再出発の道を歩み出すも、野球の未練が断ち切れず、高校野球の指導者を志した。
仕事と併用しながら、教員免を取得するため大学に通うといった苦労の連続も、仲間の支えに助けられたことで、何とか乗り越え、再びグラウンドに立ったのであった。
そんな、人一倍の苦労を経験した若林監督ではあるが、選手たちに、自身の価値観を押し付け、苦労を美徳のように語ることはしない。
むしろ、選手たちに苦労をさせないようにという意識を持ち、そのための人間力の向上に力を入れ、社会に出ても困らない状態へと育てている。
特に、どの進路にも存在し、野球においても重要である人間関係においては、厳しく指導し、監督や指導者の信頼より、仲間からの信頼を優先するよう伝えている。
他にも、社会に出てからを見すえ、挨拶や礼儀などを徹底させるために、寮生活や学校生活にもルールを設けるなどし、日常生活も活用し、人間性の成長を目指している。
人としての成長を経て、野球に取り組むことで、野球だけの人間にならず、社会に出ても役に立つ教え子を沢山輩出できるのだろ。
自分と同じ想いをさせたくないという若林監督の願いを受け止め理解した、東海大菅生の選手たちは、野球と社会での成功を目指し、今日もグラウンドで汗を流している。