2008年に、夏の東東京大会3連覇を期待されながらも、4回戦で涙をのんだ帝京高校。
当時、チームの主将を務めていたのは、名門で入学後すぐからレギュラーとして活躍し、春夏3度の甲子園出場を記録し、3年夏の東東京大会では選手宣誓も行った、杉谷拳士選手である。
杉谷選手は、トップレベルの技術を持つ選手が揃う帝京では、技術だけではレギュラー争いに勝てないと考え、「気持ち」を前面に出したプレースタイルを確立していった。
結果や周囲からの評価を気にせず、果敢に挑む姿勢が評価され、1年夏の東東京大会では背番号6をつけることとなった。
杉谷選手にとっては初の大会も、3年生にとっては最後の夏という、プレッシャーのかかる中でも、自身のプレースタイルを貫き、優勝と甲子園出場に貢献した。
甲子園では、「優勝候補」として注目され、相手チームからマークされたことで、苦しい試合が続くもベスト8まで勝ち進んでいった。
そして準々決勝では、最終回に杉谷選手の逆転打を含む8得点を挙げ、4点差をひっくり返すも、裏のイニングでは再逆転されチームは敗れた。
現在も伝説として語り継がれている智弁和歌山との準々決勝の一戦は、一球一振りで流れが左右する野球のおもしろさと怖さを、杉谷選手に伝えた試合であった。