勉強と野球を両立させるのではなく、両方に同じ力を注ぐ、「文武同道」という独自の目標を掲げ、県内トップレベルの進学校、彦根東を指揮している村中隆之監督。
部員の大半が、国公立大学を狙い、センター試験も受けるといった進学校ではあるが、2010年代に入り3度甲子園に出場し、2つの勝ち星を挙げるなど、県内トップレベルの強豪校としても認識されている。
高校野球界では、進学校と称される学校は、スポーツクラスが設置されている場合を除き、甲子園出場が目標になるケースが多いが、村中監督は、甲子園で勝つための準備を怠らない。
平日の練習時間は3時間程で、重要文化財の敷地内にグラウンドがあることから、打撃のメニューは限られるなど、練習環境は全くと言っていいほど、恵まれていない。
そこで、村中監督が考えたのは、練習や授業だけでなく、毎日の過ごし方の「質」を高めることであった。
朝練が行われる授業前の時間を学習に充て、放課後は野球に思いきり集中させ、帰宅後は勉強をしたり、自主練習をするなど各自の課題の時間に使わせるなど、 毎日のスケジュールを各自でコーディネートさせている。
普通に過ごしていては、勉強と野球のどちらもが中途半端になるため、敢えて厳しい環境に身を置かせ、乗り越える力ややりきる体力を身につけさせているのだ。
限られた条件の中で最大のパフォーマンスを発揮する日々を過ごすことで、選手たちは、野球や学力だけでなく、人としても向上し、強い精神力という武器も手に入れている。
常に試合や試験より苦しい場面を経験しているチームは、甲子園という大舞台でもストレスなく試合ができるため、強豪校相手や劣勢の場面でも、勝利を掴めるのだろう。
「文武同道」を合言葉に成長を続け、勉強と野球の両方でトップを狙う彦根東と村中監督の挑戦に、今後も目が離せない。