高校野球の指導者が教育者という肩書きを持つ以上は、人間性の部分を育てることも必要となるが、やはり、勝負にこだわる姿勢は捨ててはならない。
宇和島東や済美を指揮していた、上甲正典監督もまた、社会に出た歳に通用する人間を育てると同時に、勝利に対しても強い想いを持っていた。
上甲監督は、試合で見せる「上甲スマイル」が想像できないほど、練習中には厳しく選手たちに接し、叱責することも少なくない。
特に、「3歩以上移動する時は走る」、「返事はきちんとする」など、技術面以外の人間性の部分には、軍隊さながらの厳しさで指導をしていた。
しかし、厳しいだけの一方通行の指導では、限界があり、甲子園に出たい、勝ちたいという想いがある選手たちに、人間教育ばかりをし、野球や勝利の喜びを教えないのは失礼と考え、勝つことにも力を入れていた。
練習では、少しでも成長できるためのメニューを取り入れたり、試合でも、選手が力を出し切れるよう、ミスに対しても笑顔で見守るなど、勝利のために監督としてできることは、全て尽くしていた。
選手たちの人間的成長と夢を叶えることをサポートし、グラウンドに立ち続けた上甲監督の姿は、「上甲スマイル」と共に、多くの人々の心に刻まれている。
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