2008年の夏、低迷期を乗り越え、9年間遠ざかっていた甲子園に帰ってきた、北の名門、北海高校。
当時、チーム復活の立役者となったのは、 最速146キロのストレートを武器に、南北海道大会をほぼ一人で投げ抜いたエースの鍵谷陽平選手である。
鍵谷選手は、小学年から野球を始めると、軟式ながら投手としての力が評価され、中学時代に平川敦監督の勧誘を受け、北海高校へ進学した。
しかし、全国最多出場を記録している強豪では、同級生を含む選手たちのレベルの高さに圧倒され、練習以前のランニングメニューについていくのが、精一杯な状態であった。
また、下宿での生活や硬式野球といった慣れない環境にも苦戦を強いられ、ベンチ入りすることすらも諦めかけていた。
それでも、「雑草魂」という合言葉と、親や指導者、仲間など支えてくれる人への感謝の気持ちをモチベーションにし、人の倍以上の練習量で、1年夏から背番号を貰うと、次第にチームを引っ張る中心と投手へと成長していった。
そして、2年秋にエースナンバーを背負うと、当時、全国トップレベルのチームを毎年つくりあげていた駒大苫小牧にも土をつけ、春の全道大会を制したのであった。
迎えた最後の夏にも、南北海道大会5連覇中の駒大苫小牧を完璧に抑え、勢いそのまま、チームを甲子園へ導いたのであった。