史上初の春夏連覇を成し遂げた名門、作新学院を23歳の若さで指揮を執ることとなったのが、OBの小針崇宏監督である。
小針監督は、周囲からのプレッシャーや期待のある中、約30年間夏の甲子園から遠ざかっていたチームを、就任3年目で導くと、10年目の夏には全国制覇を成し遂げるなど、結果を残し続けている。
そんな若き名将は、自身の在学時第に甲子園を経験したことや、人として成長させてもらった母校への恩返しと、後輩たちに同じ想いを経験して欲しいと考え、指導者となった。
しかし、就任当時のチームは、技術も人間性の素晴らしさもある部員が在籍しているにも関わらず、思うような結果が残せていなかった。
そこには、長年夏の甲子園に出場できていないことで、試合になると自信を持ったプレーができずに、負けてしまうという、心の弱さがあった。
そこで、細かな野球理論や作戦を中心としたものではなく、「気持ち」をどのように持つかを重視し、メンタル面の強化からスタートしていった。
意味のない練習や、目標を持たない努力では、一生懸命取り組んでも無駄になることを伝え、目指す場所から逆算して、それらに適した「準備」と「覚悟」を持たすようにした。
やがてチームは、甲子園という存在を具体的に理解したことで、練習の量や中身に大きな変化はなかったが、質が向上したことで、小針監督就任3年目に夏の甲子園に31年ぶりに出場を果たしたのであった。
気持ちの変化で結果が変わることを目の当たりにした選手たちと小針監督は、一気に「自信」を持つようになり、2011年の夏の甲子園からは、夏の栃木県大会無傷の9連覇を記録し、現在も更新し続けている。
時間の限られた高校野球では、技術や理論も重要であるが、それ以上に、作新学院のような「気持ち」をどのように持ち、活かしていくかが、勝敗を大きく分けるのだろう。