高校野球界を代表する名監督、原貢氏を筆頭に数々の名指導者が育て上げだ東海大相模を、29歳の若さで引き継いだのが、OBの門馬敬治監督である。
選手時代には、主将を務めながら甲子園出場を果たせず、大学時代にも怪我に苦しめられ、思うような結果は残せなかった門馬監督。
しかし、指導者としては、就任翌年のセンバツ制覇にスタートし、その後も春夏1度ずつ全国制覇へ導き、20年の監督生活で甲子園25勝を挙げる、驚異的な記録を残している。
そんな門馬監督は、激戦の神奈川を勝ち抜くことや、関東最強の称号ではなく、「全国制覇」一本に目標を決め、日頃の練習から日本一を意識させている。
高校野球の強豪校であれば、「全国制覇」という言葉は、毎年のように目標として掲げられているが、選手たちのほとんどが、具体的なイメージがわかないまま、引退してしまうケースが多い。
優勝を経験した監督や選手がいれば、何となくのプロセスが見えるが、その年ごとによってライバルや野球のスタンスが変わるため、明確な基準や数字を示すことが難しく、どこか現実味がなくなってしまうのも無理はない。
そこで、門馬監督は、大会直前にその年の全国制覇に最も近い学校と練習試合を組み、「日本一」を選手たちに肌で感じさせ、学ばせているのだ。
また、甲子園大会が始まってもそのスタンスは変わることなく、1試合1試合が全国レベルを経験できるチャンスと捉え、勝利しても一喜一憂せずに、反省と課題を入念に修正していく。
甲子園という場所だけでなく、大会期間中の練習やアップも含めた全てが東海大相模の成長期間であり、日本一への道のりなのだ。
負けからのスタート、勝利からの成長で、隙のない野球を作り上げる門馬監督は、今日も「全国制覇」を目標に掲げ、4度目の頂点を目指している。