「好きになってくれないと絶対上手になりませんからね」/ 常葉菊川 森下知幸監督

2007年のセンバツ大会で、優勝候補を次々と下し勢いそのままに、頂点に立った常葉菊川(現常葉大菊川)。

続く夏は甲子園四強、翌年の夏は甲子園準優勝を成し遂げるなど、初優勝時まで、甲子園で1度も勝てなかったチームは、一気に全国レベルの強豪校となった。

そんなチームを作り上げたのが、選手時代は浜松商業の主将として、センバツ大会を制した実績や、社会人野球でプレーしていた経験もある、森下知幸監督である。

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常葉菊川野球といえば、「フルスイング野球」に積極的な走塁がプラスされた攻撃型の野球が印象的である。

選手権で準優勝を果たした08年夏の甲子園では、5試合で35得点を僅か6イニングのみで挙げるなど、小さなチャンスを無駄なくビックイニングにする破壊力は、全国の強豪校にも大きな衝撃を与えた。

日々の練習から大ぶりではなく、豪快なスイングを意識させて打撃練習を行ったり、僅かな隙でチャンスを広げれるよう、走塁や相手の弱点を見抜く目を養うなど、手堅いバントに頼らない野球を目指していた。

しかし、森下監督は練習時間の半分以上に「守備」を取り入れるほど、「守り勝つ野球」にも拘り、チームを作り上げていた。

打撃練習をいくら増やしても、攻撃は相手投手の調子によって左右されることが多く、得点の想定も難しい。

得意とする攻撃野球ができず、チームが試合のペースを掴めない状態になった場合でも、失点をしなければ、勝てないまでも負けないため、練習では徹底して守備を鍛えていたのだ。

実践を想定したノックでは、監督自らがノッカーとなり、捕れるか捕れないかの、際どい打球で、選手たちの守備範囲を広げている。

少しでも気持ちの入っていないプレーや、諦めたりする態度を見せると容赦なく檄を飛ばし、選手たちを鍛えていた。

守備練習では、豪快なフルスイング野球とは異なり、気になるプレーや、判断や連携が難しいプレーには、選手たちを集めて話し一つ一つ丁寧に確認していた。

そして、「好きになること」が成長への必要条件という持論から、しんどい守備練習にも「楽しみ」を作らせ、嫌いにさせないように雰囲気作りにも気を配っていた。

甲子園でも、常葉菊川の選手たちは「楽しく」グランドを駆けていたが、楽しむことで、実力以上の力を発揮していたのだろう。

現在「ノーサイン野球」で再び注目を集めている常葉菊川は、森下監督の作った伝統を受け継ぎ、全国制覇を目指している。

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森下監督もまた、御殿場西高校で、自身3度目の全国の頂点を狙っている。

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